2008 Fiscal Year Annual Research Report
学校教育と社会的不平等に関する国際比較研究:PISAデータの分析を中心に
Project/Area Number |
19330189
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尾嶋 史章 Doshisha University, 社会学部, 教授 (30177224)
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Keywords | 国際比較 / 社会階層 / 学力 / 世代間移動 / 多水準データ / 教育システム / 所得移動 / 教育達成 |
Research Abstract |
今年度は、2003年PISAデータの分析を中心に、研究成果を学会等で公表した。成果は下記のようにまとめられる。この多くは、3月に発刊した第1次報告書に収められている。 1.学業達成の規定要因分析 (1) 学業達成の規定要因分析として、日独比較ならびにPISA参加国30国あまりを用いた分析を行った。その結果、出身階層と学業達成の結びつきには、いくつかのパターンがあり、それらは教育システムの違いや家庭での親の役割の違いによって分化する傾向がみられた。 (2) 2000年PISAデータを用いて、親の不在(片親家族)の問題も検討した。親の不在は経済的な問題を通じて子どもに影響することが想定されることが多い。しかし父親の不在、母子家庭の場合だけでなく、母不在、父子家庭の場合にも子どもの学業達成に負の影響が確認され、親不在が単に経済的な問題に還元できないことが示された。 2.学校教育と関わる構造的不平等に関する国際比較 (1) 日本とフランスに関して、雇用者父子間の世代間所得移動を両国の社会移動データを用いて比較分析した。この結果、フランスと比較して日本はより移動性の高い(父との関連の小さい)社会であることが明らかになった。 (2) GoldthorpeとBreenによって提唱された教育機会の不平等の生成理論である相対的リスク回避説を2005SSMデータで検討した結果、日本においてはこうした説明が明確には成り立たないことが示された。 3.PISAデータの分析に関する支援 PISAは独特なデータ構造を持っているため、複雑な計算方法が提唱されている。日本語でのマニュアルが存在しないことが、PISAを用いたデータ分析の普及の妨げとなっている面もある。そこでその解決の一助として、データの構造と分析手法を解説した。
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Research Products
(6 results)