Research Abstract |
研究計画の最終年度にあたる本年度は,小学校児童を対象とした算数科授業データについて,さらに収録と分析を進めるとともに,研究全体のまとめを行い,研究成果を学会における論文発表や書籍の刊行の形で公表した。 具体的には,都内の国立大学教育学部附属小学校において第5学年の「分数の加減」の授業データを新規に収録するとともに,昨年度収録した栃木県宇都宮市内の公立小学校第6学年の教室における「比例」の授業と併せ,授業の展開及び授業者と抽出児童による授業の知覚を授業後のインタビューデータから分析した。その結果,算数科授業の展開の分析,授業者・学習者に対するインタビューデータの分析結果,及び本研究がこれまでに行ってきた中学校数学科授業の分析結果との比較を通して,算数科における教師と児童の相互作用の様相が明らかになるとともに,児童を対象とする再生刺激インタビュー法についての研究方法論上の課題が指摘された。 本年度は,4年間に得られた研究成果についてのまとめを行い,冊子体の最終報告書,及びデータを整理した資料集を作成した。さらに,和文,英文各1冊の著書(『授業を科学する:数学科授業の研究への新しいアプローチ』,Matbematical Tasks in Classrooms around the World)を出版した。また,研究代表者が,研究協力者とともに第34回数学教育に関する心理学国際研究会(PME34,平成22年7月,ベロオリゾンチ,ブラジル)に参加し,研究発表を行うとともに,D.Clarkeメルボルン大学教授ら海外の共同研究者と今後の研究の展望について討議した。本研究課題は最終年度を迎えたが,今後他国の授業との比較研究をさらに展開することが合意された。
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