Research Abstract |
本研究の目的は,変質する21世紀を担いうる市民の育成をめざす教育を,英国シティズンシップ教育の批判的摂取に基づいた小中高一貫カリキュラムの作成を通して,検討・構想することにある.そのために本年度は,(1)カリキュラムの大枠となる概念フレームワークの検討,(2)英国におけるシティズンシップ教育の現状や,カリキュラム・教材の開発状況の調査,(3)日本側研究協力校における「政治的リテラシー」に特化した授業の実施と英国側研究協力者を交えた授業についてのディスカッション,並びに研究交流を行った。 具体的には,(1)については,シティズンシップ教育の特徴をわかりやすく示すフレームワークを,「シティズンシップの性格」と「シティズンシップ教育の構造」の2つの側面から再構成するとともに, どのようなカリキュラムが描けるかを, 環境,メディア,公共性等,キャリア,国際理解の5つの領域から具体的に検討した,(2)については,英国教育水準局,マンチェスター大学,ヨーク大学,英国教育学会(年次セミナー)等を訪問し,シティズンシップ教育の現状についての行政(シティズンシップ教育の査察状況),実践(学校や学校以外の場所で行われているシティズンシップ教育の状況),理論(学会におけるシティズンシップ教育の理論化)の三方面から実地調査を行った。(3)については,昨年度に英国側の協力校(フルフォード中等学校,ハンチントン中等学校)が実施した政治的リテラシーに関する授業と同一テーマの授業(「愛国心は必要か」「良い政治家の条件は何か」)を,日本側協力校である3校(京都教育大学附属高等学校,立命館大学宇治高等学校, 京都教育大学附属京都小学校)で実施するともに,日本と英国におけるシティズンシップ教育の展開可能性について,招聘した英国側研究協力者を交えて,実際の授業観察を踏まえた研究協議を行った。
|