2008 Fiscal Year Annual Research Report
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19340016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 謙一 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 准教授 (20242810)
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Keywords | K3曲面 / Kummer 曲面 / 解析的捩率 / 保型形式 / モジュライ空間 / 楕円j関数 / BorcherdsΦ関数 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,対合付きK3曲面の不変量τの構造を研究した.この不変量τは同変解析的捩率とBott-Chern 二次特性類を用いて筆者が2004年に導入したものである.昨年度までの研究で,対合の不変格子の階数が10以上17以下の場合に対して,τの明示公式が得られていた.本年度は,対合の不変格子の階数が高い場合に対してτの明示公式を求めるため,同変Quillen計量と同変解析的捩率の退化を研究し,それらの特異性を必要な場合に決定した.その結果,対合の不変格子の階数が18以上の場合でも,不変量τは階数が10以上17以下の場合と全く同様の明示公式を充たす事が判った. 大阪大学の川口周氏と共同で,楕円j関数の差とBorcherdsΦ関数の関係を研究した.両者を関係付けるために二つの楕円曲線の直積から得られるKummer曲面上の不動点無しの対合を考えた.この様な対合は金銅誠之氏と向井茂氏により構成が行われ,大橋久範氏により分類が行われた.その結果として,一般の直積型Kummer曲面は15個の固定点無し対合を持つ事が知られており,9個はLiberman型,6個は金銅向井型である事が知られている.我々はLiberman型対合の商として得られるEnriques曲面と金銅向井対合の商として得られるEnriques曲面に注目し,それらの周期におけるBorcherdsΦ関数の値を考察した.その結果,9個のLiberman 型対合から得られるEnriques 曲面に対するBorcherdsΦ関数の値の積と,6個の金銅向井型対合から得られるEnriques曲面に対するBorcherdsΦ関数の値の積の適当な比が, j 関数の差の12乗に一致することがわかった.
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