2009 Fiscal Year Annual Research Report
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19340016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 謙一 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 准教授 (20242810)
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Keywords | 解析的捩率 / モジュライ空間 / 保型形式 / K3曲面 / 楕円モジュラー関数 / BorcherdsΦ-関数 |
Research Abstract |
(1)2004年に筆者が導入した対合付きK3曲面の不変量を研究した.この不変量は対合の位相型を表すK3格子の双曲型部分格子M毎に,モジュライー空間上の関数として定まる.Mの階数が17以下である場合に,位相型Mの対合付きK3面のモジュライ空間上で,上記不変量はモジュライ空間上の保型形式のノルムとして表示できる事が筆者により示されていた.今年度は同様の主張をMの階数が18以上である場合にも示し,その場合に現れる保型形式の明示公式を決定した.この結果は以下の(2)の研究の応用である. (2)コンパクトLie群が正則かつ同変に作用する代数多様体の曲線上の族に対して,族の判別式軌跡の近傍で同変解析的捩率の漸近挙動を調べた.中野の意味で半負な正則ベクトル束を係数束に持つ場合に,同変解析的捩率がパラメーター空間上の関数として判別式軌跡の近傍で漸近展開される事を示した.さらに,特異ファイバーの特異点が緩やかな場合(半安定退化や標準特異点しか持たない場合)に,漸近展開の特異性の主要部を特異ファイバーのガウス写像に付随する特性類を用いて表示した. (3)楕円モジュラー関数の差をBorcherdsΦ-関数により表示する問題を研究し,普遍定数を含めて具体的な表示を得た.この事実と算術的リーマン・ロッホ定理の応用として,BorcherdsΦ-関数の算術的な意味を研究した.適当な条件下では,BorcherdsΦ-関数の値が,(i)K3曲面の周期(ii)エンリケス対合を整数環上のK3曲面で考えた時の固定点軌跡の台に含まれる素数により記述される事がわかった.
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