2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19340016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 謙一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20242810)
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Keywords | 解析的捩率 / 中野半正ベクトル束 / 半安定還元 / ガウス写像 / ボルチャーズφ関数 / トマエ公式 / チョウラ・セルバーグ公式 |
Research Abstract |
代数多様体の一変数退化族とその上の中野半正ベクトル束に対し,解析的捩率の退化挙動を決定した.解析的捩率の発散の主要項は対数的で,その係数はガウス写像の不定点解消から定まる特性類と,考えている族とその半安定還元に対する高次順像層の食い違いを用いて表される.この結果を得る過程で,中野半正ベクトル束の高次順像層上のL2計量の特異性の構造を解明し,特にL2計量の曲率がポアンカレ増大する事と第一チャーン形式の判別式軌跡近傍における漸近展開を得た.以上の定理の解析的捩率に対する幾つかの応用を得た. ボルチャーズΦ関数の代数的表示を得た.ヤコビΔ関数が楕円曲線の判別式として表示される事は古典的であるが,この結果をエンリケス曲面に対して拡張した事になる.結論を具体的に述べる.エンリケス曲面の普遍被覆K3曲面を五次元射影空間の完全交叉として表示する時,ボルチャーズΦ関数のピータソンノルムは定義方程式系の終結式と留数として定まる正則2形式のL2ノルムの積として表される.この定理から,例えば超楕円曲線に対して知られているトマエ公式のボルチャーズΦ関数版を得る事ができる.また,直積型クンマー曲面上のリバーマン型対合に対して,クンマー曲面を定義する楕円曲線が虚数乗法を持つ場合,ボルチャーズΦ関数に対するチョウラ・セルバーグ型公式を得た.類似して,1の原始5乗根の作用を持つ種数2曲線のヤコビ多様体から定まるクンマー曲面に対し,偶対合の場合に,ボルチャーズΦ関数のノルム明示公式を得た.
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