Research Abstract |
課題に関して,以下の研究を行った. ・連続マルチンゲールに対する条件付き漸近展開の研究を行った. ・混合型漸近展開の理論を応用し,ボラティリティ推定問題における高次推測論の基礎的な研究として,拡散過程の増分の強可予測核による2次形式に対する分布の漸近展開を研究し,公式の実際的な近似の精度を数値実験によって検証した. ・条件つき漸近展開の方法を用いて,条件付き推測理論を研究した. ・非同期共分散推定に関して,非同期2次形式の漸近混合正規性の証明を与えたが,これを発展させ,非線形パラメトリゼーションでの非同期拡散係数推定問題の研究を行い,疑似最尤推定量の漸近挙動に関して結果を得た. ・ファイナンスへの確率過程の統計推測理論の応用について研究した.とくに,リードラグインデックスを提案し,大規模な実データからリードラグインデックスの時系列変化を観察した.その時間発展を記述する新しいラグ構造のモデルを考え,現象を再現した. ・漸近展開の理論を表現する基礎となる無限次元確率解析,とくにconfigration space上のマリアバン解析に関して理論の整備を試みた. ・ボラティリティデリバティブの理論上の価格と,リアライズドボラティリティによる推定価値とのかい離の分布の2次近似に関して研究した. ・離散観測に基づく確率微分方程式の推定問題において,高速増加実験計画条件を緩めるための適合型推定量に関して,それに対する疑似尤度解析の構成を行い,漸近挙動を調べた. ・有限時間離散観測の場合のボラティリティのパラメトリック推定に対応する疑似尤度解析の構築において,統計的確率場の非エルゴード統計的振る舞いに対応し,極限における統計モデルの分離性の指標はランダムになるが,その非退化性の確率論的評価が重要になる.非退化拡散型過程が基礎にある場合,あるランダムな積分の非積分関数の確率的非退化性を取り出すことに帰着し,これはその関数からできるテンソル場のある意味の非退化性の問題になる.非退化になる判定条件を与え,この非エルゴード的な系に対して疑似尤度解析が実行できることを示した.
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