2008 Fiscal Year Annual Research Report
偏微分方程式の未知境界・係数同定逆問題の再構成スキームの研究
Project/Area Number |
19340028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 玄 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (50118535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 尚文 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (00238817)
利根川 吉廣 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (80296748)
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Keywords | サーモグラフィー / 熱伝導体 / 介在物 / 逆問題 / dynamical probe method / 基本解 / 熱作用素 |
Research Abstract |
当該研究目的、研究実施計画の一部であるサーモグラフィーに対する数理を中心に研究した。即ち、熱伝導体内の未知介在物を、熱伝導体表面における温度と熱流を繰り返し計測(以下境界上の多重観測とよぶ。)することにより未知介在物を同定する逆問題である。ここで熱流計測は、熱伝導体表面における、Stephan-Boltzmann則が既知であるとの仮定の下で、温度計測より分かるものとする。得られた結果は、熱伝導率が非等方かつ時間に依存する場合まで込めて、境界上の多重計測から未知介在物を同定するある手続き(以下dynamical probe methodとよぶ)を与えたことである。ここに研究代表者とその共同研究者が数年来に亘って研究してきたdynamical probe methodは完成したといってよい。これまでに行われてきた他の研究は、境界上の多重計測による未知介在物同定の一意性についてであった。その未知介在物同定の手続きを与えた研究代表者とその共同研究者による今回の研究は初めてであり、極めて重要な意義がある。 今回の研究での最大の困難は、偏微分方程式論における未解決問題 : 不連続な熱伝導係数を持つ熱作用素に対する基本解の空間一回微分の評価法の解決にあった。今回の研究成果で、この未解決問題に解決を与えたことも大きな成果といえる。 また、この基本解の評価法は、Babuskaの問題 : 不連続係数を持つ2階楕円型方程式の解の1階微分評価問題に関するLi-Nirenbergの結果を、不連続係数を持つ2階放物型方程式系に拡張可能であることをも示している点も重要である。
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