Research Abstract |
中間子の性質・構造,とくに低質量(<1GeV/c^2)のスカラー中間子の存否,性質を圧倒的な高統計の二光子過程生成データを取得・解析し,詳細な振幅解析を行って明らかにする研究計画である。Bファクトリー実験Belleでは,主目的であるCP不変性の破れの研究以外でも,世界一を誇るルミノシティによって,本研究の主題である二光子過程の研究にも圧倒的な高統計のデータを取得できる。なぜか競争相手のBaBar実験ではこの研究は行われておらず,世界唯一の研究である。強い力を記述する理論,量子色力学による描像では,ハドロンの質量はカイラル対称性の自発的破れ(強い相互作用のヒッグス機構)で生じている。そのヒッグスボソンに相当するのがπ中間子とスカラー粒子である。スカラー粒子を理解することは,量子色力学の真空の本質的理解につながる。高統計の二光子過程はスカラー粒子等をクリーンに生成でき,その構造等の理解に大きく寄与する過程である。 平成19年度には,まず荷電パイ中間子対生成の高統計の断面積データを2編の論文にまとめ学術雑誌に発表した。従来の統計では見えなかったf_0(980)中間子の共鳴ピークがはっきり見え,その質量,崩壊幅,二光子幅の測定結果等を発表した。その解析をさらに発展させるため,アイソスピンの異なる終状態,中性中間子対生成の解析を行っている。まず一つ目の論文,95fb^<-1>の統計による中性π中間子対の論文をまとめ,投稿間近な状態である。この解析のために,終状態が全て光子であるデータの抽出・解析を行っている。高統計であるため,測定器のモンテカルロシミュレーションも高統計に行う必要があり,そのための専用の計算機ファームを高エネルギー加速器研究機構に設置し,稼動させている。現在統計を223fb^<-1>に増やしたところで,π^0π^0,ηπ^0,ηη等の終状態の解析を順次行い,発表していく予定である。
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