Research Abstract |
Bファクトリー実験は従来の2-3桁上の高統計データを提供し,その主目的であるCP非保存の研究以外の物理でも質の高いデータを提供し続けている。とくに,二光子過程の中間子対生成反応の研究では,なぜか好敵手のBaBar実験からはほとんど論文が出ず,Belle実験の独断場となっていて,世界で唯一の高統計データを提供してきた。これらのデータは,低エネルギー領域では,謎の多いスカラー中間子の構造や性質の解明等への重要な手掛かりを与える。また,高エネルギー領域では,強い力の理論,量子色力学の高エネルギー極限の非包含的過程での予言の定量的な検証をはじめて可能とした。 本研究では,全中性モード(終状態が光子だけからなる反応)の解析を行って,すでにγγ→π^0π^0の論文は投稿印刷され,平成21年度はγγ→π^0ηの論文が投稿印刷された。現在世界初となるγγ→ηη過程の論文を仕上げて実験グループ内で推敲されている段階である。また,当初計画の目的にはうたっていないが,最近の相次ぐ4-quark statesやmeson-bound states候補の発見にかんがみ,それらの粒子の性質の解明(量子数の決定)や新たな粒子の発見を目指してγγ→D^<(*)>D^^-^<(*)>およびωJ/ψ生成の解析を行ったところ,前者は現段階で論文にするには統計が足りないと結論したが,後者では質量3915MeV/c^2,幅17MeVの新粒子を発見し,Phys.Rev.Lett.の論文となった これらの結果を国内外の国際会議やシンポジウムで発表し,情報を交換して,さらにデータや解析の改良を行い,その質を高める努力をしている。本研究は今年で最終年度であるが,所期の目標は十分達し,さらに将来に向けてK_sK_s対生成反応の論文作成に向けてデータ抽出を終えたところである。
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