2007 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体電子構造と電子対形成における頂点酸素の役割解明
Project/Area Number |
19340093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 慎一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
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Keywords | 銅酸化物高温超電導体 / 頂点酸素 / 酸素同位体効果 / 多層系高温超伝導体 / 角度分解光電子分光(ARPES) / ドーパント原子の整列 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の超伝導の舞台は銅と酸素原子がつくるCuO_2面であるが,その外側でCu原子の真上に位置している酸素原子(頂点酸素)が超伝導臨界温度T_cに大きな影響を与えていることが経験的に知られている。この頂点酸素の高温超伝導における役割,T_cを変化させるメカニズムを様々なスペクトロスコピーを用いて解明することが本研究の目的である。本年度の研究により得られた成果は以下の通りである。 1)酸素の同位体置換(^16O→^18O)がCuO_2面内の電子(準粒子)の運動に与える影響を低エネルギー放射光を用いた高分解能角度分解光電子分光(ARPES)で調べた。同位体効果は,T_cではなく,大きな運動量をもつ電子の運動に影響を与えているという従来の結果を否定する証拠を得た。 2)単位胞中にCuO2面を複数枚もつ多層系銅酸化物高温超伝導体HgBa_2Cu_nO_2n+2+δ(n=2-5)を合成し,CuO_2面間のジョセフソン結合に起因するジョセフソン,プラズマモードを遠赤外光学スペクトルで観測した。頂点酸素の位置がCuO_2面間のジョセフソン結合強度そしてT_cのCuO_2面枚数(n)依存性に影響を与えていることを明らかにした。 3)頂点酸素がドーパント原子の役割を果たしているSr_2CuO_3+δにおいて,頂点酸素原子の不規則,規則配列とT_cとの間に明確な相関があることを実証した(中国北京科学技術院との共同研究)。 これらの成果は,高温超伝導体において,頂点酸素の位置,乱れ,振動(フォノン)が超伝導性にどのような効果を及ぼしているかを明らかにしており,T_cの向上方策の指針を与えるものである。
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Research Products
(4 results)