2008 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体電子構造と電子対形成における頂点酵素の役割解明
Project/Area Number |
19340093
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 慎一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
|
Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 頂点酵素 / STM / STS / 酵素同位対効果 / 局所的結晶乱れ / Tcの向上 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の超伝導の舞台は銅と酸素原子がつくるCuO_2面であるが、その外側で銅原子の真上に位置している酸素原子(頂点酵素)が超伝導臨界温度に大きな影響を与えていることが経験的に知られている。この頂点酵素の高温超伝導における役割、Tcを変化させるメカニズムを様々なスペクトロスコピーを用いて解明することが本研究の目的である。本年度の研究により得られた成果は以下の通りである。 1Bi系高温超伝導体結晶構造の特徴はBiO面の原子位置が周期的に変調していることである。この変調超構造がCuO_2面にどのような影響を及ぼしているかは、これまで未解明であった。本研究では走査型トンネル顕微分光(STM/STS)を用いて、CuO_2面の超伝導状態がBiO面の変調に合わせて周期的変化をしていることを明らかにした。影響を受けるのはCuO_2面の超伝導ギャップの大きさであり、BiO面の変調により頂点酵素のCuO_2面からの距離が変化することによるものであると結論した。 2前年度に引き続き酵素の同位体置換(^<16>O→^<18>O)がCuO_2面内の電子の運動に与える影響を高分解能角度分解光電子分光(ARPES)で調べた。同位体置換により酵素が関与するフォノンの周波数が変化する。ARPESの結果からCuO_2面内の電子と強く結合しているフォノン・モードを同定できた。強く結合しているのは銅と面内酵素との結合長を変調させるフォノン・モードであり、特定の運動量をもつ電子と結合している。 3Bi系高温中超伝導体は結晶変形や結晶乱れの大きい物質であり、それがTcを低下させる要因となっていると考えられている。本研究ではBi系高温超伝導体結晶のどのサイトの変調と乱れがTcにどの位の影響を与えているかを、結晶成長による乱れの制御とスペクトロスコピー実験とをフィードバックさせることによって明らかにした。Tcを低下させる最大の要因は頂点酸素に近接する原子の乱れであることがわかり、その乱れを極力減らすことにより、通常Tc=90kgのBi系超伝導体(Bi2212)のTcを98.5Kまで上昇させることに成功した。
|
Research Products
(4 results)