2007 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物の多自由度結合系における強相関量子相の研究
Project/Area Number |
19340097
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 教授 (90176363)
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Keywords | 強相関電子係 / 遷移金属酸化物 / 多自由度結合系 / 量子物性 / NMR |
Research Abstract |
3d遷移金属酸化物中の強相関電子系は、3d電子が持つ電荷、スピン、軌道の自由度によって高温超伝導や巨大磁気抵抗効果など従来の物理概念を書き換える重要な物性を発現する舞台となってきた。本研究では、NMRを用いて、3d遷移金属酸化物において、電荷、スピン、軌道の自由度および格子の自由度が結合することによって現れる強相関量子相の異常物性の発現機構を解明し、新しい物性を開拓することを目的とした研究を進めた。本年度は、バナジウム酸化物を主な対象として以下の研究を行った。1.バナジウムブロンズは電荷秩序転移を伴った金属絶縁体転移を起こす擬一次元物質として知られている。β-Li_<0.33>V_2O_5を対象にして、単結晶試料を用いたV核のNMR実験から、金属相、絶縁体相における微視的な電子状態について調べ、電子分布のモデルを提案した。さらに、β・Na_<0.33>V_2O_5に対して、Na核の核スピン格子緩和率の測定を行い、Na原子のホッピング運動が金属相で起きていることを見出した。2.擬一次元構造を持つバナジウム酸化物の一つとして、ホーランダイト型構造を持つK_2V_8O_<16>を取り上げた。この系はV^<3+>とV^<4+>の混合原子価をとり、金属絶縁体転移を起こすと同時に電荷秩序転移が起きる。V核のNMR測定を行い、金属相において観測した異方的なナイトシフトが特異な軌道状態に起因することを明らかにした。さらに、低温の電荷秩序相でスピンシングレットになることを示した。3.約700Kで電荷秩序転移を起こすスピネル型酸化物AlV_2O_4のスピン状態をV核とAl核のNMR測定から調べ、低温の電荷秩序相では、1つのVサイトは常磁性スピンを持ち、他の2つのVサイトは非磁性となることを明らかにした。この結果は、理論的研究から提案された7量体モデルで説明できることを示した。
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Research Products
(10 results)