2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオンスピン回転緩和法による層状コバルト酸化物の全領域電子・磁気状態図の解明
Project/Area Number |
19340107
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Research Institution | Toyota Central R&D Lab., Inc. |
Principal Investigator |
杉山 純 Toyota Central R&D Lab., Inc., 先端研究センター連携研究部門, プログラム・マネージャー主席研究員 (40374087)
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Keywords | ミュオンスピン回転・緩和 / 層状構造コバルト酸化物 / 2次元3角格子 / 幾何学的競合 / 熱電材料 / 超伝導材料 / リチウム電池材料 |
Research Abstract |
コバルトイオンが2次元3角格子を形成するCoO2面とアルカリイオン面が、交互に積層する一連の層状コバルト酸化物では、「CoO2面の構造的な安定性」と「電子間の強い相関」および「3角格子特有の幾何学的な競合(3頂点のスピンを同時に反強磁性整列させられない)」のために、CoO2面のキャリア濃度(平均価数)の変化に伴い超伝導を含む多様な巨視的現象が発現する。これらを統一的に理解するために、Coの平均価数が3.4から4.0の範囲の普遍的状態図を、ミュオンスピン回転緩和(μSR)法により決定することが本研究の目的である。 特に今期はCoO2面間に2重又は4重岩塩層が含まれる系について実験を行った。2重岩塩層系ではキャリア濃度が低過ぎるので(Co価数は+3に近い)、磁気的な異常は1.8-300Kの範囲で検出されなかった。一方良好な熱電性能を示す4重岩塩層系では、核磁場の影響を排除するために弱縦磁場μSR測定を行い、従来知られていなかった磁気的な異常を60K付近に見出した。これは電気抵抗の温度依存性が極少を示す温度に対応し、磁気的な相関・異常と電子輸送現象との間の強い関係を示唆した。 さらにCoO2面と同様の構造を有するNiO2面を含む化合物についても、精力的に研究を行った。世界に先駆けてLixNiO2のx=0から1の全範囲で(つまりNiの平均価数が3から4の範囲で)磁気的な状態図を決定した。更に系統的な実験により、理想的なLiNiO2の基底状態がA型の反強磁性であることを実証した。 またCoO2面と同様の構造を有するMnO2面を含む化合物、CoO2鎖が2次元3角格子を組む擬1次元系化合物、Mnが正4面体格子を組むスピネル系化合物、さらにはVがジグザグ鎖を組むV2O4系の擬1次元系化合物についても実験を行い、幾何学的な競合が基底状態や電子輸送現象に与える効果を調べた。
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Research Products
(36 results)