2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19340114
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
柳下 明 High Energy Accelerator Research Organization, 物質構造科学研究所, 教授 (80157966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (10322629)
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Keywords | 完全実験 / 多重同時計測運動量画像分光法 / 電気双極子遷移行列要素 / 局在した空孔 / サイト選択的結合切断 / 多原子間共鳴光電子放出 |
Research Abstract |
光電子と光解離イオンの多重同時計測運動量画像分光法により、ランダムに配向したCO2およびCS2分子からの光電子の角度分布、解離イオンの角度分布、そして配向分子からの光電子の角度分布を一回の測定で得られるリスト・データから構築した。これらの角度分布を解析することによって、光電離過程を記述する電気双極子遷移行列要素の振幅と位相をユニーク決定する(完全実験)ことに成功した。現時点で最も信頼性の高いtime-dependent density functional theory(TD-DFT)の計算でも完全実験の結果を再現できないことが明らかにされた。分子の光電離過程を忠実に再現するためには、より高度な理論計算の開発が必要であることが明らかにされた。 C_2H_2分子のCls光電離過程において、光電子と光解離イオンの多重同時計測運動量画像分光法により、解離チャンネル毎にCls光電子の角度分布を測定した。その結果、Cls光電子の角度分布の形は、解離チャンネル毎に著しく変わることを発見した。特に、Clsの局在した空孔を持つC_2H_2分子の対照性の低下を反映して、反転対象性を失うことを明らかにした。本研究成果は、サイト選択的結合切断に発展する。 多原子間共鳴光電子放出が起こる最もシンプルな系として、NO分子を標的として二原子間共鳴光電子放出の研究を行った。すなわち、N原子よりも内殻のイオン化エネルギーの高い0原子の内殻励起エネルギーに放射光をチューンして、Nls光電子の測定を行い、共鳴増大がでるかどうかを調べた。その結果、放射光の電気ベクトルに対して垂直に配向したNO分子からのNls光電子の角度分布には、僅かながら二原子間共鳴光電子放出の共鳴増大が現れることを明らかにした。本研究の成果は、固体サンプルの多原子間共鳴光電子放出のメカニズム理解のための基礎となる。
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