2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19340114
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
柳下 明 High Energy Accelerator Research Organization, 物質構造科学研究所, 教授 (80157966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10322629)
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Keywords | 分子座標系での光電子の角度分布 / 内殻光電離ダイナミクス / 多重同時計測運動量画像 / 希ガス・ダイマー / 放射性電荷移動 / 分子内電子散乱 / 光電子回折 |
Research Abstract |
分子座標系での光電子の角度分布(MF-PAD)による、基本分子の内殻光電離ダイナミクスの研究を新たな観点から発展させ、新しい研究分野の開拓を目指して推進した。平成21年度は、最近開発してきた多重同時計測運動量画像観測法を駆使して、希ガス・ダイマーや6員環分子などへ研究対象広げるとともに、分子内光電子散乱モデルによるMF-PADの研究をおこなった。 C_6H_6分子およびC_6H_5F分子においては、C 1sおよびF 1s光電子のMF-PAD測定には成功しなかったものの、イオンの多重同時計測運動量画像測定から、光解離イオンのベクトル相関を明らかにした。その結果、オージェ崩壊後に生成された二価の分子イオンから放出される光解離イオンはほぼ6員環の形を保ったまま分子面内で放出されることを明らかにした。 Ar_2およびXe_2ダイマーにおいては、深い価電子軌道電子の光電離放出に伴い二重電離が起こり、最初はひとつの原子に局在した二価の電荷が放射性電荷移動により二つの原子に分配され、最後は二つの一価の原子として解離することを明らかにした。 CO分子においては、光電子の運動エネルギーが比較的高い領域(>50eV)でC 1sおよびO 1s光電子のMF-PAD測定をおこない、その結果を多重散乱の理論計算と比較した。その結果、光電子の運動エネルギーの関数として見た時の後方散乱のピーク強度の振動が多重散乱の理論計算で良く再現できることを明らかにした。この結果は、光電子の運動エネルギーが比較的高い領域では、分子内電子散乱が支配的であることを示唆するものであり、単一分子の光電子回折法へと発展する極めて重要な成果である。
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