2008 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス形成物質の誘電損失極小かさあげの原因の再検討
Project/Area Number |
19340116
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野嵜 龍介 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 准教授 (00180729)
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Keywords | ガラス転移 / 誘電損失 / 誘電分光 |
Research Abstract |
α過程やJG-β過程などの誘電緩和過程が大変よく把握されている糖アルコール(1分子の炭素数Ncと水酸基数Nhは同じ)のシリーズを用い、精密誘電損失測定から過冷却液体・ガラスにおける誘電損失極小かさあげの原因を再検討する。1昨年度に構築・調整した低温広帯域誘電分光システムを用い、異なるNcをもつ糖アルコール(グリセロール(Nc=3)、キシリトール(Nc=5)、ソルビトール(Nc=6))の精密複素誘電率測定を行い、その温度依存性と周波数依存性の比較検討を行った。これまでの研究結果と同じく、α過程の緩和時間・誘電緩和強度・分散の形状はNcに対して系統的に変化した。すべての試料について、α過程の高周波側の裾にNCL的な誘電損失分散が観測された。ソビトールでは、200K付近の温度で100Hz〜10GHzにおいて誘電損失が周波数のべき乗則で記述されるNCLが認められた。キシリトールのNCLは10KHz〜で認められた。ところが、グリセロールには193Kまでの温度にべき乗則で記述される誘電損失は見出されなかった。この違いは、我々が2006年に報告した低温低周波における誘電損失の温度依存性に見られた傾向に矛盾しない。2ヘキサントリオール(Nc=6、Nh=3)について同様の測定を行った。その結果、α過程はグリセロールに近い振る舞いを示したが、高周波側の裾は周波数が大きくなるにつれてソルビトールの振る舞いに近づく傾向が見られた。しかし、べき乗則を満たすNCLは見出されなかった。3結論水素結合性液体における誘電損失極小のかさあげは、局所的分子構造に強く依存する。Ncが大きな場合、極小へのNCLの与が大きい。Ncが小さな場合の裾の構造は複雑で、単純にNCLとして扱うことはできない。極小のかさあげは、fast-β過程のような単一の現象に起因するものではない。
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Research Products
(14 results)