2009 Fiscal Year Annual Research Report
大地震の断層滑り帯のダイナミクス-集集地震における滑り帯物質からの逆解析
Project/Area Number |
19340120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 秀実 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 講師 (40236625)
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Keywords | 断層すべり帯 / 集集地震 / 車籠埔断層 / 断層掘削コア / 地震ダイナミクス / エネルギー散逸 |
Research Abstract |
東京大学に搬送されたコアの必要な部分[滑り帯を含む約100m]、についてのコア処理をほぼ完了させた.このコアを用いて断層岩分布および断層岩分布およびそれらの産状の記載も概ね完了した.その後、各断層帯について,稠密な微小構造観察を行い、破壊/変質過程の切断、重複関係を検査し、断層帯間の新旧関係を把握した.この検討は次の方法によって行った.(1)各破砕帯を横切るコア試料を半割した上で、半割面の研磨面を作成して観察.(2)合計約280試料の岩石切片を切り出し、薄片を製作し、光学顕微鏡で破壊/変質微小組織を観察し、それらの組み合わせを調べ、構造の新旧関係を判断した. 構造の検討により最も新しい断層面と判断された深度1136mの滑り帯を孔壁の物理検層の結果と合わせて注意深く検討した結果,この断層面が集集地震のすべり面であると推定された,同時に,滑り面を含む断層帯(いわゆるアーキテクチャ)の,構造非対称が顕著であり,この非対称性が動的なすべり過程によってもたらされたものであると推定された. 昨年,集集地震の滑り帯内部の破壊粒子の産状,粒径分布を,光学顕微鏡(OM),走査型電子顕微鏡(SEM),および透過型電子顕微鏡(TEM)で観察,計測した結果,滑り面の破壊粒子の最小粒径は1nmのオーダーであったとしたが,このうち数十nm以下の粒子は流体から再結晶した,すなわち化学的に生成された粒子である可能性が極めて高いことが判明した.数十nm以下の粒径分布は破壊に特徴的なベキ乗則に従わないことから,従来破壊エネルギーと見積もられたエネルギーのうち大きな部分が化学的なエネルギーである可能性があり,計算方法の見直しが求められる.化学計算を新たに開発し,集集地震において大きなすべりを示す車籠埔断層北部で消費されたエネルギーを計算している.
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