2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19340158
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大河内 直彦 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 海洋・極限環境生物圏領域, プログラムディレクター (00281832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 祐典 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (10359648)
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Keywords | 西南極氷床 / ロス海 / 放射性炭素年代 / 堆積物 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
地球温暖化にともなう西南極氷床の融解の危険性は,気候研究者および氷床学者によって1970年代前半から長らく指摘されてきた。南極縁辺海には,こういった西南極氷床の地質学的な過去における消長の歴史が記録されていると考えられている。本研究では,南極大陸から削剥される物質の「汚染」によりこれまで難しかった放射性炭素年代測定を,堆積物中の脂肪酸に応用することにより,正確な年代決定法として位置づけようとするものである。 私たちは本研究において,アメリカ合衆国フロリダ州立大学の堆積物コア庫において保管されていた堆積物試料から,ロス海各地で採取された8本の海底コアを選択し,譲り受けた。そして,それらについて脂肪酸成分を抽出し,昨年度までに本研究にて新たに開発した高速液体クロマトグラフィー/蒸発光散乱検出器(HPLC/ELSD)を用いる脂肪酸精製法により炭素数14~18の直鎖飽和および不飽和脂肪酸を精製し,加速器質量分析計(AMS)を用いてその放射性炭素年代を測定した。その年代測定の結果と層相や珪藻化石,^<10>Beなどの変化をもとに,西南極氷床の後退にともなう棚氷縁辺部の通過に対応する堆積層相変化の年代を水平方向に追いかけた。これら一連の分析結果は,完新世中期(約5000年前)には,棚氷縁辺部が現在よりも2000キロメートルほど沖側に位置していたことを明らかにした。すなわち,過去5000年間にわたって,西南極氷床のロス海部は大きく後退してきたことを強く示唆する結果を得た。
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