2008 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子の新しい重水素濃集メカニズム : 極低温星間塵表面反応
Project/Area Number |
19340167
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 直樹 Hokkaido University, 低温科学研究所, 准教授 (50271531)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
|
Keywords | 星間塵 / 星間分子 / 重水素濃集 / 極低温表面反応 |
Research Abstract |
本研究のねらいは極低温星間塵表面反応による星間分子の重水素濃集メカニズムの解明である。平成20年度は, ホルムアルデヒドおよび水分子の重水素濃集プロセスに関する実験を行った. 宇宙(分子雲)におけるホルムアルデヒドは重水素/水素比が数十%程度まで高度に重水素濃集している. 濃集プロセスとして氷表面におけるH-D原子置換反応が重要であることは以前の研究で分かっていたが, その反応速度の情報は得られていなかった. 本研究では低温氷上のH_2COおよびD_2COにそれぞれD, H原子を照射することにより, H-D(D-H)置換反応, H, D原子付加反応の実効的な反応速度を求めた. これまでの研究成果と併せると, CO-ホルムアルデヒドーメタノールを含めた反応系のうち, 主要な反応経路の実効反応速度がすべて明らかになったことになる. 水分子の重水素濃集過程に関しては, O_2分子へのD原子逐次反応の温度依存性を調べた. 水分子におけるH-D(D-H)置換反応は観測されなかったが, CO-ホルムアルデヒドーメタノール反応系と比較して反応可能温度域は10Kほど高く, 反応速度は10〜100倍大きいことが分かった. 重水分子は極めて効率的に生成されるが, その反応経路は付加反応のみであるため(置換反応がないため), タイムスケールの大きい宇宙空間では結果的に重水素濃集度は10-3程度に抑えられることが考えられる.
|