Research Abstract |
本研究では,太陽系形成初期におこったと考えられる大規模な衝突現象に注目し,その結果もたらされる物質の進化に関しての知見を得ることを目的とする.ここで考える衝突とは,現在の惑星を作る元の物質であった,小惑星であり,そうした小天体が太陽系初期には無数に存在し,衝突合体を繰り返しながら,その後現在見られるような惑星系が形成されたと考えられる.このように,衝突現象はその後の太陽系物の形成の一大過程であり,本研究はその過程を化学的な視点から解明することを目指すものである.太陽系初期過程を研究するには隕石が唯一の研究対象となるが,本研究ではそのなかでHED隕石をとりあげる.HED隕石は分化した隕石の代表的な隕石グループで,特にユークライト隕石は玄武岩質の隕石で,数100km程度の大きさを持つ小惑星の表層物質であったと考えられている.このユークライト隕石中には本来白金族元素の含有量が極端に乏しく,逆にこの特質を利用して,ユークライト隕石中の白金族元素含有量を正確に定量することにより,その衝突の履歴を明らかにすることを考えた.そのために,平成19年度は,先ず,固体試料中の微量の白金族元素の精密定量法の確立を目指した.従来,NiS fire assay法により,固体試料中の微量白金族元素を抽出し,誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法で定量する手法を開発してきたが,この手法で欠点とされるオスミウムの不完全な回収を改良すべく,酸化オスミウムの抽出操作を導入した.この手法により,白金族元素6元素すべて,高収率で回収することが可能となり,信頼性の高いデータを取得することが可能となった.さらにこの手法を標準岩石試料に適用し,ppbレベルの白金極元素の定量値を再現性良く求めることが可能となり,隕石試料への適用の準備が整った.
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