2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19350007
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中嶋 隆人 The Institute of Physical and Chemical Research, 次世代分子理論特別研究ユニット, 副ユニットリーダー (10312993)
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Keywords | 理論化学 / 相対論的分子理論 / 大規模分子理論 |
Research Abstract |
ナノマテリアルや生体分子など大規模分子系における新たな構造・現象の解明を目指し,大規模な分子系の電子状態計算に適した分子理論の開発を行ってきた.密度汎関数法は軽い計算負荷ながらも比較的精度の高い計算が実現できるので,大規模分子系の計算に適した方法である.Gauss型基底を用いたKohn-Sham密度汎関数法において最も計算時間を必要とする部分は4中心2電子反発積分を要するCoulomb積分の計算であり,その2電子反発積分の数すなわち計算時間は分子の大きさNに対してO(N^4)のスケールで増大する.そこで大規模な分子系の計算を実現するためには,分子の大きさに対して計算時間が穏やかなスケーリングで比例するCoulomb積分の近似計算法が必要である.われわれはこれまでにO(N)でCoulomb積分を高速に計算するGauss型-有限要素Coulomb積分法(GFC法)という方法を開発した.GFC法では一様な立方体有限要素基底と原子核を中心とする局在Gauss型基底からなる混合補助基底を用いてCoulombポテンシャルを関数展開する.これにより時間のかかる2電子反発積分の計算を回避することができる.RI法や平面波補助基底法など,これまでに提案されている補助基底法が電子密度を関数展開するのに対し,GFC法ではCoulombポテンシャルを関数展開するのが特徴である.大規模な重原子分子系の大規模計算を実現するために,本年度はGFC法を相対論的分子理論へと拡張した.これにより,重原子効果とスピン-軌道効果のふたつの相対論効果を同時に取り扱いながらも,大規模な重原子分子計算を可能にすることができた.
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