2007 Fiscal Year Annual Research Report
超高速分光法と理論解析による超臨界水中での分子内電荷移動過程の解明
Project/Area Number |
19350010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60221925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓文 京都大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70290905)
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Keywords | 超臨界水 / 電荷移動 / 超高速分光 / ラマン分光 / RISM-SCF |
Research Abstract |
本研究では、超臨界水中での電子・振動スペクトルならびにその緩和ダイナミクスの特徴を包拮的に理解することを目的として、超臨界水で電荷移動遷移をしめす分子の超高速光励起緩和過程に対する総合的なアプローチをおこなう。今年度は、おもに過渡吸収システムの立ち上げとラマン分光法による溶媒和構造の評価、およびRISM-SCFをもちいた振動分光へのアプローチをすすめた。具体的には、今年度設備備品として購入したCWレーザーを励起光源とするチタンサファイアレーザーとその再生増幅器をもちい、OPA(optical parametric amplifier)の自作をおこない640nm付近の波長の光を生成させた。白色光は紫外領域の光を発生させるためにCaF2板に基本波を集光することで生成させた。残念ながら再生増幅器にトラブルが生じ、十分な実験時間を確保することができなかったため、過渡吸収スペクトルを測定するところまではいかなかったが、ほぼシステムを完成させるところまでおこなった。一方で、超臨界水中での振動スペクトルに関連して、ニトロアニリン(pNA)やデカフルオロベンゾフェノン、アミノベンゾニトリル(ABN)などのラマン測定を超臨界水や超臨界アルコール中でおこない、特徴的な密度変化を検出することに成功した。これらの特徴的な密度変化に対して、クラスターモデルによる電子状態計算をおこない、溶媒和の状態に関する考察をすすめた。さらに分子動力学計算により超臨界水中でのABNの水素結合数を評価し、実験結果との対比を進めた。また、新たに開発した電荷分布の広がりを取り扱えるRISM-SCF法をもちいて、溶液中におけるABNの振動数計算を行った。溶質溶媒問の非静電的相互作用や、両者の運動の時間スケールなど、現行の計算手法に内在する問題点を明らかにすることができた。
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