2008 Fiscal Year Annual Research Report
超高速分光法と理論解析による超臨界水中での分子内電荷移動過程の解明
Project/Area Number |
19350010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60221925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓文 京都大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70290905)
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Keywords | 超臨界水 / 電荷移動 / 超高速分光 / ラマン分光 / RISM-SCF |
Research Abstract |
本研究では、超臨界水中での電子・振動スペクトル及び光緩和ダイナミクスの特徴を包括的に理解することを目的として、超臨界水での超高速光励起緩和過程に対する総合的なアプローチをおこなう。今年度は、主にp-ニトロアニリン(PNA)の過渡吸収測定と、p-アミノベンゾニトリル(ABN)の振動スペクトルの評価とRISM-SCFをもちいた電子状態計算を進めた。昨年度来構築してきた過渡吸収システムに改良を加え、室温から400℃の超臨界条件下までの等圧線に沿ってPNAの光励起緩和過程を測定することに成功した。その結果、測定を行った領域では励起状態の寿命は1ps以下と非常に短いことが明らかとなった。今後、励起状態のスペクトル変化を詳細を検討するとともに、超臨界条件下での密度変化にも検討を加えていく予定である。一方で、ABN分子の電子遷移及びCN伸縮振動数を詳細に検討し、超臨界条件下では主に誘電的性質の変化が支配的であり、常温常圧付近で水素結合による特異な変化が観測されることが明らかとなった。 この点に関連して、水中のABNについてRISM-SCF-SEDD法を用いた計算を行った。電子遷移エネルギーの密度依存性を求めたところ、実験的に得られた吸収スペクトルのピークと概ねよい一致を示すことが分かった。この方法では、溶液中における電子状態の詳細のみならず、周囲の溶媒和構造に関する情報を得ることもできるが、これまで電子励起状態への適用はなされておらず、本課題によって初めてこれを達成することができた。特に高密度側で現れる特異的な挙動が、電子状態よりむしろ水和構造に由来していることが示唆された。また動径分布関数の解析から、広い密度範囲で水和構造が大きく変化していることがわかった。一方で、同法は平衡状態に関する理論であり、ABNの構造や電子状態の緩和など、実験結果との直接的な比較を行うためには幾つかの課題が残されており、今後、溶液内分子の光過程に対する一般的な取り扱い方法の確立を目指す。
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Research Products
(10 results)