2007 Fiscal Year Annual Research Report
イオン蓄積リングを用いた冷イオン分子分光と輻射冷却過程の分光学的追跡
Project/Area Number |
19350015
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
城丸 春夫 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 准教授 (70196632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒玉 健 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20285092)
奥野 和彦 首都大学東京, 理工学研究科, 客員教授 (70087005)
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Keywords | イオン蓄積リング / フラーレン / 遅延過程 / レーザー分光 / フタロシアニン / 輻射冷却 / 準安定状態 / 黒体輻射 |
Research Abstract |
本年度は主として、レーザー脱着で生成した負イオンを静電型イオン蓄積リング(E-ring)に入射、蓄積して分光実験を行った。蓄積イオンにOPOレーザーを照射し、遅延過程で生成した中性種の収率め波長依存性を測定することにより電子スペクトルを得ている。C60負イオンのレーザー分光では、蓄積時間の関数として電子スペクトルを得た。スペクトルの形状はIh対称のC60のものとほぼ一致したが、立ち上がりが一致しないことから、ヤーンテラー分裂における異性体の存在が示唆されたが、詳細は検討中である。またイエテボリ大学との共同研究で、高温C60負イオンについて、自動電子脱離の速度とレーザー誘起電子脱離の速度を比較することにより、輻射冷却速度の絶対値測定を行った。さらに高温のフタロシアニン亜鉛負イオンをE-ringに蓄積してレーザー分光を行い、レーザー脱着過程によりイオンの構造が破壊されていないことを確認した。このイオンでは蓄積時間25-175msの間で、励起スペクトルに輻射冷却によるピークの先鋭化が明確に観測された。 その他のE-ring実験としては、炭素クラスター負イオンの励起状態の寿命測定を行った。先行研究では炭素数4,6,8の負イオンについては準安定励起状態が存在しないとされていたが、今回、それらのイオンについても準安定イオンの存在を確認した。またE-ringを冷却することによりE-ring内壁からの黒体輻射を低減し、準安定イオンの長寿命化を観測した。 イオン源に関しては、E-ring入射用のESI/イオントラップの性能評価を行った。またESIを大気圧レーザー脱着型イオン源に換えてフラーレンの蓄積を行った。以上の結果については内外の学会で報告するとともに、一部を論文として発表した。
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