2007 Fiscal Year Annual Research Report
最適化極短パルスを用いた多原子分子反応の実時間構造追跡と制御
Project/Area Number |
19350017
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹内 佐年 The Institute of Physical and Chemical Research, 田原分子分光研究室, 先任研究員 (50280582)
|
Keywords | 時間分解分光 / フェムト秒パルス / 多原子分子 / 光異性化 / インパルシブラマン / 分子振動 / コヒーレンス / 非調和結合 |
Research Abstract |
本年度は3つの光パルスを用いた時間分解インパルシブ・ラマン分光のための実験装置を立ち上げ、この装置を使って代表的な超高速反応分子の振動構造変化の観測を開始した。 まず、チタンサファイア再生増幅器の出力光を光源として用い、これにより励起された非同軸光パラメトリック増幅器により可視領域の極短パルス(480〜720nm)を発生させた。これを分子振動の時間領域分光に適用する場合、指紋領域を含む広い振動数領域を同時に観測するためにはパルス幅を10fs程度まで圧縮する必要がある。このため、プリズム対と回折格子対を併用して光パルスの群速度分散を高次項まで補償することを試みた。この結果、600nm光のパルス幅を最短9fsSkで圧縮することができた。 次に、励起状態分子に対する時間分解インパルシブ・ラマン分光のセットアップを製作した。チタンサファイア再生増幅器の出力光の一部を最初に分けて第2高調波、または第3高調波に変換し、それを試料分子の光励起のためのポンプ1光として使った。残りの増幅器出力で10fsパルスを発生させ、それを2つに分けて、一方を励起分子中にコヒーレンスを生成させるためのポンプ2光として、他方をプローブ光として使った。ポンプ1光、プローブ光のタイミングを別々の精密ステージで変えることにより、光励起後の時間を掃引しながら、時間領域振動分光データを取得することができるようになった。 製作した分光装置を用いてシスースチルベンの反応性S_1状態に対する時間分解インパルシブ・ラマン分光を行った。この結果、S_1状態に特徴的な240cm^<-1>の振動を吸収のビート成分の形で時間領域で観測することに成功し、さらに、その振動数が光励起からの時間とともにピコ秒スケールで顕著な低波数シフトを起こすことを見い出した。これは、光異性化反応に伴う構造変化との非調和結合を介して240cm^<-1>モードの振動数が変化した結果と考えられる。
|
Research Products
(8 results)