2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19350018
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久新 荘一郎 Gunma University, 大学院・工学研究科, 教授 (40195392)
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Keywords | π単結合 / 共役 / π-π*吸収帯 / ラジカルアニオン |
Research Abstract |
ケイ素-ケイ素π単結合とフェニル基の間に共役が起こるかどうかを調べるために、2,2,4,4-テトラ-tert-ブチル-1,3-ジフェニルビシクロ[1.1.0]テトラシラン(1)を合成し、その構造や電子的性質を調べた。化合物1のX線結晶構造解析を行ったところ、橋頭位のフェニル基はビシクロ[1.1.0]テトラシラン環の平面に対して10.9°傾いているが、共平面に近い構造をとっていることがわかった。また、化合物1の紫外可視吸収スペクトルにおけるπ-π*吸収帯は572nmに観測され、この値は1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチルビシクロ[1.1.0]テトラシラン(2)の488nmより84nmも長波長側にシフトしている。これはケイ素-ケイ素π単結合がフェニル基と共役しているためであると考えられる。 化合物1、2をカリウムで還元するとラジカルアニオンが生成し、そのシグナルがESRで観測される。化合物2のラジカルアニオンでは、橋頭位の^<29>Siによる結合定数は6.39mTと大きく、tert-ブチル基の水素による結合定数は0.057mTと小さい。それに対して化合物1のラジカルアニオンでは、橋頭位の^<29>Siによる結合定数は4.73mTと小さく、フェニル基の水素による結合定数は0.126、0.043、0.163mTと比較的大きい。この結果は化合物1のラジカルアニオンの不対電子がπ単結合とベンゼン環の両方に非局在化していることによると考えられる。また、これらのラジカルアニオンのX線結晶構造解析を行ったところ、ケイ素-ケイ素π単結合長はいずれも中性状態よりも伸長しているが、特に化合物2の伸長幅が大きいことがわかった。また、化合物2のラジカルアニオンでは、tert-ブチル基はビシクロ[1.1.0]テトラシラン環に対して約31.7°トランス形に折れ曲がっているが、化合物1のラジカルアニオンでは、フェニル基の折れ曲がり角は小さい。以上の結果はケイ素-ケイ素π単結合とフェニル基の共役はラジカルアニオンにおいても有効に働いていることを示している。
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Research Products
(9 results)