2008 Fiscal Year Annual Research Report
外部環境応答型の電子スピン構造を有する有機ラジカルの合成
Project/Area Number |
19350022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 靖 Osaka University, 理学研究科, 准教授 (70230133)
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Keywords | 開殻分子 / 奇交互炭化水素 / フェナレニル / 非局在性 / 電子スピン |
Research Abstract |
有機分子骨格上全体に不対電子が広く非局在化した「電子スピン非局在型」の開殻有機分子は、合成の困難さから従来ほとんど研究対象になってこなかった未開拓の物質群である。分子骨格上のπ電子と不対電子の強固な相互作用が期待でき、用いる溶媒、温度やpH、光などの外部環境変化に敏感に応答した電子スピン構造の自由度を有する物質群であると考えられる。我々は、精密有機合成化学の手法と構造有機化学的考察を活用することでこれらの開殻有機分子群の合成に成功してきた。本研究課題において我々は、独自に設計・合成した6-オキソフェナレノキシル(6OPO)と命名できる空気中でも安定な中性開殻有機分子(中性ラジカル)に着目し、以下に示した化学修飾を行い、溶液状態における外部環境応答型の動的電子スピン構造に関する実験を行いその性質を明らかにした。 (1)相補的水素結合が可能なウラシル誘導体を結合させた中性ラジカルを合成し、ESR/1H-ENDOR/1H-TRIPLE測定により電子スピン構造を決定した。また、分子間水素結合と電子スピン構造との相関についての実験的および理論的知見を集積した。 (2)拡張されたπ共役系を有する電子供与性分子である1,6-ジチアピレンを6OPOに結合させた中性ラジカルを設計・合成した。そして、溶液状態における光照射実験を行い、照射エネルギーと分子内電子移動に基づく電子スピン構造の動的な挙動を明らかにした。
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