Research Abstract |
従来は,熱発光のためにガンマ線照射を行っていたが,種々の議論から,より低エネルギーのエックス線照射実験でも理論上は熱発光が観測されることが示唆された.もし,これが達成できるならば,より簡便に熱発光実験が可能になり.本研究のさらに効率的な研究展開が期待できる.そこで,平成20年度は,ジフェニルメチレンシクロプロパン類(1)のメチルテトラヒドロフラン(MTHF)のマトリックスのエックス線照射-昇温実験による熱発光の観測を,次の二つの条件で試みた. 条件1:W target/40kV/1mA(和歌山大学,X線照射用) 条件2:Cutarget/40kV/200mA(大阪府立大学,XRD測定用) その結果,条件1の場合には熱発光が観測され,501および533nmに極大をもつ発光スペクトルが観測された.そのスペクトルは,ガンマ線照射-昇温実験の場合のそれ(発光極大,501および533nm)とよく似ており,エックス線照射でもガンマ線照射と同じく,トリメチレンメタン(TMM)型励起ビラジカル(2^<●●*>)が発生し,それが発光することが強く示唆された.なお,この場合には,肉眼で発光を観測できたがその強度はガンマ線照射のそれに比べ弱く,発光のCCDカメラによる記録には及ばなかった. これを解決すべく,条件2では,はより強いエックス線解析装置の線源を用いた.その結果,肉眼でわずかに確認できるほどの発光は観測されたが条件1にくらべ弱く,熱発光スペクトルの測定,CCDカメラによる記録には及ばなかった. 以上のように,原理的にはエックス線照射でも熱発光スペクトルの観測が可能であることが分かった.反応機構は,ガンマ線照射のそれとほぼ同じであると考えられる.現状では,発光強度に問題があるので,今後は実験条件を再検討し,発光強度の向上を図る.
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