Research Abstract |
本研究では,光機能性錯体フタロシアニン(Pc)の示す大きな電子吸収,発光,磁気円偏光二色性(MCD)に着目し,(1)シリカやアルミナ微粒子へPc錯体を担持した有機一無機複合微粒子の科学の開拓と(2)無機磁性材料へPc錯体を担持した有機一無機複合型磁性材料における新規磁気光学物性の発現を目的とする。 本年度,明らかになったことは以下の通りである。 (1)Pc担持シリカゲル微粒子 シリカゲルへのPc担持量を段階的に変え,その光物性(吸収,蛍光,一重項酸素発光)を測定した。その結果,固体でありながら,溶液中のモノマーと同等の光物性を有するPc担持シリカゲル微粒子を合成することに成功した。この系は一重項酸素発生剤として有効であり,本研究成果は,Chem.Phys.Lett.,Eur.J.Inorg.Chem.に掲載された。 (2)Pc担持磁性シリカゲル 酸化鉄ナノ微粒子を内包する磁性シリカゲルへPcを担持し,その光物性を測定した。酸化鉄ナノ磁性体の存在により,蛍光は効率よく消光された。一方,磁性体が存在した方が,一重項酸素生成効率が高いことを見出した。これは,磁性体による項間交差の促進で説明でき,本研究で初めて見出された効果である。また,Pcの担持量は酸化鉄ナノ微粒子の1/42倍の重量%しかないのに対し,PcのMCD強度は,酸化鉄由来のものと同程度であった。このように,Pcの磁気光学効果は,無機磁性材料と比肩できるほど大きいことを実験的に初めて示した。
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