2007 Fiscal Year Annual Research Report
次世代先端医療のための糖鎖連結ハイブリッド金属錯体の構築と実用展開
Project/Area Number |
19350031
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
矢野 重信 Nara Women's University, 大学院・人間文化研究科, 教授 (60011186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 誠 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教 (70343267)
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30220081)
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Keywords | 医療 / 糖鎖 / ハイブリッド体 / 金属錯体 / 光線力学療法 / 光増感剤 / 制がん剤 / クリックケミストリー |
Research Abstract |
1.本研究は、当研究室で世界に先駆けて切り開いてきた糖質の配位化学を基盤にして、糖鎖を連結させた先端医療用金属錯体および核画像診断薬の合成とそのバイオメカニズムの解明を目指すものである。本年度は先端医療用金属錯体の基礎としてS-グリコシド配位子の設計およびCu(II)錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。 2.糖質がN-グリコシド結合、O-グリコシド結合により配糖体が形成され重要な生理機能を担っていることはよく知られている。本研究では、まだ金属イオンとの相互作用が十分解明されていないS-グリコシド結合に注目し、D-グルコースと2,2'-ジピコリルアミン(DPA)分子をS-グリコシド結合で連結した配位子を新たに合成した。糖部位は、水酸基がアセチル基で保護された配位子と脱保護された配位子を用意した。次に、それらの配位子を用いた銅(II)錯体の合成を行い、その固体状態および溶液内構造についてX線結晶構造解析、電子吸収スペクトル、CDスペクトル、EPR測定、EXAFS測定等を用いて検討した。 3.糖部位がアセチル基で保護された配位子を用いた銅(II)錯体の構造は、X線結晶構造解析よりDPAの3つの窒素原子、塩化物イオン、アノマー位のチオエーテル硫黄原子が配位した歪んだ五配位四角錐構造であり、Cu-S結合距離がかなり長くなっていることが明らかとなった。錯体の溶液中のCDスペクトルにおいてコットン効果が観測されることから、硫黄原子が銅イオンに配位し、金属まわりに不斉な環境が存在することがわかった。アセチル保護体、脱保護体の銅錯体は同様のコットン効果を示すことから、どちらもチオエーテル硫黄原子の絶対配置は同じであると考えられる。以上、本研究結果は等質をS-グリコシド結合により連結させた医療用金属錯体の開発にとって重要な知見を与えるものとみなされる。
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