2010 Fiscal Year Annual Research Report
次世代先端医療のための糖鎖連結ハイブリッド金属錯体の構築と実用展開
Project/Area Number |
19350031
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 重信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 客員教授 (60011186)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30220081)
赤司 治夫 岡山理科大学, 自然科学研究所, 教授 (30221708)
柴原 隆志 岡山理科大学, 理学部, 教授 (30122386)
|
Keywords | 医療 / ハイブリッド体 / 糖鎖 / シッフ塩基 / 制がん剤 / 薬理活性 / 白金錯体 / パラジウム錯体 |
Research Abstract |
1.本年度は、世界に先駆けて独自に切り開いてきた糖質の配位化学という研究領域を基盤として、抗がん性貴金属錯体として糖鎖連結白金およびパラジウム錯体の開発を行った。 2.1)D(+)グルコサミン、2-ピリジンカルバルデヒドおよびK_2[PtCl_4](またはNa_2[PdCl_4])を作用させることにより、ワンポット反応で、糖鎖連結白金錯体[Pt(GlcN=py)Cl_2]およびパラジウム錯体[Pd(GlcN=py)Cl_2])を高収率で得た。単結晶X線構造解析により、いずれの金属中心も平面四配位型のシスプラチンcis-[PtCl_2(NH_3)_2]によく似た構造をとっていることを明らかにした。2)上記パラジウム錯体[Pd(GlcN=py)Cl_2]のピリジン部位をキノリノールに変えた新規パラジウム錯体[Pd(GlcN=quinolinol)Cl_2]の合成を行った。元素分析、^1H NMRおよび^<13>CNMR測定より、シッフ塩基の配位した目的の錯体の生成を確認した。また、^1H NMRの糖部位のシグナルより、α-isomerであることが判明した。パラジウム錯体水溶液(紅紫色)の電子スペクトルの吸収極大波長は218,262,300nmに出現し、それぞれ短波長側からπ→π*transition,π→π*transition、MLCTと帰属した。蛍光スペクトルは、390nmの励起光で測定を行ったが、蛍光を示さなかった。 次いで、1)で合成した金属錯体のin vitro抗がん性試験を行った。 3.高収率で得られた糖鎖連結白金錯体[Pt(GlcN=py)Cl_2]およびパラジウム錯体[Pd(GlcN=py)Cl_2]は、大腸がんならびに胃がん細胞に対して有効な抗がん活性を示した。本研究結果は、糖質を連結させた医療用ハイブリッド体の開発にとって有用な知見を与えるものとみなされる。
|