2008 Fiscal Year Annual Research Report
多様なメタロホスフィンキレートの合成法の開発と配位子としての機能の解明
Project/Area Number |
19350032
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水田 勉 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 准教授 (70221603)
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Keywords | リンメタラサイクル / Pd挿入反応 / 2核錯体 / パラダサイクル / Heck反応 / Pdナノ粒子 |
Research Abstract |
リンメタラサイクルには、多くの報告例があるが、その殆どは3価のリンが金属に結合したものであり、5価のリンとなったものは、1例しかない。本研究では、歪んだ5価ホスファ4員環化合物P(=E)(N^iPr_2)(naph)(E=S,O;naph=1,8-naphthylene)に対して0価パラジウムPd(PPh_3)_4を反応させることにより、P-C結合にPd(PPh_3)フラグメントが挿入した5員環ホスファパラダサイクル[Pd{K^2P,C-μ_2-PE-P(=E)(N^iPr_2)(naph)}(PPh_3)]_2を合成した。この生成物において、P(V)-メタラサイクルは、メタロリガンドとして、Eを介して、Pdに配位し、2量体構造を形成していた。また、このメタラサイクルのリン中心は、不斉であるので、2量体にはメソ体とラセミ体が存在したが、熱力学的には、2枚貝に似た構造をもつラセミ体が安定であった。Pdに配位したE配位子は、dppeを加えると容易に解離し、単核の錯体を与えた。一方、単座のリン配位子を加えた場合は、E配位子はPdから解離せず、2核構造を保持したまま、PPh_3のみの交換が起こった。このようにして得られたいくつかの2枚貝構造の開口角は、Pdに結合した単座リン配位子の立体的嵩高さに応じて変化した。最も嵩高いPCy_3では、最大となり、最も小さなPMe_3では、開口部が閉じて、Pd-Pd結合が生じるほど接近した。 一連のP(V)-メタラサイクルのうち、PPh_3の結合したものについては、スチレンとPhIとのHeck反応に対する触媒活性も調べた。その結果、約90時間後に触媒に対して7万当量のPhCH=CHPhを与え、既報の触媒に比べて中程度の活性が見られた。水銀テストによりこの反応の活性種は、パラダサイクルから生じたPdナノ粒子であることが示唆された。
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