Research Abstract |
本研究により開発を目指す分析システムの根幹の一つである,紫外線照射プローブの試作と基礎検討を中心に研究を実施した。こでは,ベースとなる加熱炉型熱分解装置の上部から,光ファイバーを炉心付近の所定の位置まで精密に導入し,光源からの可視、紫外光を,所望の温度条件下で目的試料の任意の部位に局所的に照射することによって,試料の光および熱による分解、劣化を達成するプローブを作成した。特に照射処理の再現性の向上と,生成物のスムーズな分析系内への移行を実現するために,資料カップをプローブの先端に固定して装着する方式を採用し,また,カップに適宜通気用の孔を設けるなどの方策を採った。 試作したこの照射プローブの基本性能を,代表的な合成ゴム原料であるポリブタジエン(PB)を試料として確認する実験を行った。空気雰囲気下で12時間紫外線照射することによりPBから発生する揮発性生成物を捕集、濃縮し,これをガスクロマトグラフ/質量分析計により分析した結果,PB分子主鎖が開裂していることを反映する,2-プロペナールの生成を確認することができた。また,照射後に残留したPB試料を熱分解ガスクロマトグラフィー測定した結果,熱分解生成物として,PB分子鎖間の架橋形成を反映する,スチレンが観測されることがわかった。これらの結果より,本開発装置を用いることによって,PBの紫外線劣化は,分子鎖の開裂と架橋構造の形成とが競争的に進行することによって発現することが実証された。
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