2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19350052
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 高範 Waseda University, 理工学術院, 教授 (80265735)
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Keywords | 選択的合成・反応 / 有機金属触媒 / ファインケミカルズ / 不斉合成 |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いる不斉付加環化反応は、光学活性環状化合物を合成する上で、原子効率が高く、かつ汎用性の広い反応である。報告者は既に、キラルイリジウム、あるいはロジウム触媒を用いることにより、軸不斉や、従来構築が困難であった不斉四級炭素中心の高エナンチオ選択的な創製に成功した。 今回報告者はその展開として、軸不斉と中心不斉の同時創製を伴う不斉付加環化反応を達成した。すなわち、これまで複数の不斉を同時に構築する反応は多く報告されているが、異種の不斉を同時創製する例はこれまで報告されていない。そこで報告者は、アルキン末端に嵩高いアリール置換基を有するエンインとアルキンの[2+2+2]付加環化反応において、縮環部へ中心不斉の構築と、アリール置換基と生成する1,3-シクロヘキサジエニル骨格の間への軸不斉の構築を目指した。その結果、嵩高い対アニオンをもつキラルロジウム触媒と、嵩高いアルキンを選択することで、高ジアステレオかつエナンチオ選択的に中心と軸の異種不斉の創製を達成した。 別の展開として、炭素-炭素単結合の切断を基点する不斉付加環化反応を達成した。すなわち、従来の付加環化反応では、アルキンやアルケンなどの不飽和結合と金属錯体の酸化的カップリングによりメタラサイクルが生成し、それが活性中間体となる。そこで報告者は、歪みをもつ四員環骨格を有するビフェニレンに着目し、遷移金属錯体による炭素-炭素単結合の切断により得られるジベンゾメタラシクロペンタジエンの利用を検討した。その結果、キラルイリジウム触媒を用いて、ビフェニレンとオルト置換アリールアルキンの反応を行ったところ、軸不斉を有する光学活性フェナントレン誘導体が得られた。本結果は、炭素-炭素単結合の切断を基点する触媒的不斉反応の数少ない例のひとつと言える。
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