Research Abstract |
ブロック鎖長比を1:1に保ち,鎖長を変化させたイオン性両親媒性ジブロックコポリマー,poly (n-butylacrylate)-b-poly (styrenesulfonate)をリビングラジカル重合法により合成した.得た高分子の鎖長は,50:50,40:40,30:30,20:20,10:10である.表面張力測定により界面活性を調査したところ,重合度30以上のブロックポリマーは界面不活性性を示すのに対し,20以下のものは,高濃度で表面張力が大きく低下し,界面活性を示した.したがって,界面不活性性の発現には,疎水鎖と親水鎖のブロック比のみが関与するのではなく,「絶対重合度」も重要な因子であることが明らかとなった.我々は,界面不活性性の発現は,イオン性の親水鎖による気水界面での鏡像電荷効果が「高分子」であることにより増幅され,疎水吸着力に勝るためと考えている.イオン性低分子界面活性剤でも鏡像力は作用するはずであるので,いわゆる「高分子性」が界面不活性性発現の重要因子と考えられる.このような考え方に基づくと,上記実験結果は,「重合度30以上が高分子」であることを意味していると解釈でき,「高分子とは何か」という本質的問題にも関連する貴重な成果であると言える. さらに,鏡像電荷効果の寄与を確認するために,誘電率の異なる有機溶媒と水との界面への高分子の吸着挙動の調査を行った.吸着による界面張力の変化を懸滴法により厳密測定したところ,有機溶媒の誘電率に大きく依存することがわかった.鏡像力の強さは,水と界面を形成する媒体の誘電率差に依存することから,この結果は,鏡像電荷効果の影響を示唆するものと言える.しかし,その傾向は,かならずしも誘電率の順番とは一致せず,別の因子も作用している可能性が示唆された.有機溶媒の疎水性や水との界面のナノ構造などが考えられ,引き続き検討を行うこととした.
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