Research Abstract |
界面不活性高分子の応用として,乳化剤として利用ることを検討した.用いたポリマーは,ポリスチレンとポリスチレンスルホン酸のジブロックコポリマーであり,DEPNをmediatorとしたリビングアニオン重合法により合成した.重合度は,50:50前後のものを数種合成し,表面張力測定により界面不活性であることを確認した.また,静的光散乱法により,ミセル会合体を形成すること,およびミセルを形成し始める濃度,すなわち臨界ミセル濃度を決定した.このポリマーを乳化剤として用い,スチレンの乳化重合を行った.AIBNを開始剤とする通常の乳化重合で,球状ポリスチレン粒子が得られることを,AFMおよびSEMにて確認した.また,予想通り,乳化重合中には泡は発生せず,「無気泡での乳化重合」という新規な手法の確立に成功した.得られたポリスチレン微粒子は,透析による精製の後,動的光散乱法により,拡散挙動とその添加塩濃度依存性を調査した.得られる流体力学的半径(Rh9は,AFMやSEMで測定されたポリスチレン粒子そのものの大きさ(R)よりかなり大きくなり,表面にポリスチレンスルホン酸がグラフトされていることが確認された.その本数は,電気伝導度滴定により,一粒子あたり数千本と見積もられた.流体力学的半径は,添加塩濃度の増加とともに,0.1M程度までは不変で一定の値となり,それ以上では減少した.これは以前の高分子ミセル系でも観察された臨界塩濃度に対応するものと考えられ,Rhの減少は,グラフト鎖の収縮によるものと考えられる.さらに塩濃度を増加させるとRhは,Rより10%ほど大きな値で再び一定となった.これはグラフト鎖が収縮しきった状態と考えられ,この吸着層により凝集せず安定に存在している状態と推察される.このように,Rhが再度一定になる塩濃度の存在は始めて発見されたものであり,第二臨界塩濃度と名付けた.
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