Research Abstract |
本年度は,外部刺激による特性転移の第一歩として,pHに応答して界面不活性/活性転移を起こすポリマーの合成とその特性解析,およびミセル構造解析を中心に行った.界面不活性性は,両親媒性ブロックポリマーの疎水性とイオン性のバランスにより発現するため,疎水鎖は従来から用いている柔軟なpoly(n-butyl acrylate)とし,親水鎖はポリアクリル酸(PAA)とした.PAAは弱酸であるため,中性およびアルカリ性ではポリアニオンとなるが,酸性ではほとんど中性に近い挙動を示す.様々なブロック長・ブロック比のポリマーを,ニトロキシラジカルをmediatorとするリビングラジカル重合に依り合成し,その起泡性と表面張力を測定した.いずれのポリマーも,pH8および10では,ほとんど泡立たず,界面不活性性を示した.しかし,pH2では,高い起泡性を示し,界面活性となることが確認され,pHによる界面活性/不活性の転移現象を確認した.特に,ブロック鎖長50:50のポリマーの転移が顕著で,酸性条件で非常によい起泡性をしめした.一方,それより長い,または短いポリマーの酸性での起泡性は50:50ほど高くなく,転移現象に鎖長and/or鎖長比依存性があることが確認された.これは原因不明の新現象であり,今後,詳細に調査していく予定である.中性およびアルカリ条件での表面張力は,ごくわずかに減少する程度であった.これはポリマーが弱酸性であるためであると考えられる.またミセルの流体力学的半径を動的光散乱にて測定したところ,高分子の鎖長から考えて妥当な値が得られた.しかし鎖長依存性はそれほど顕著ではなく,ミセル会合数の変化が起こっていると考えられる.また,新たな試みとして,RAFT重合によりイオン性モノマーを直接重合し,イオン性両親媒性ブロックポリマーを合成した.カチオン性ブロックポリマーの精密重合に成功し,その界面不活性性も確認できた.
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