Research Abstract |
pHによって,界面活性/不活性の転移を示す系の構築を目指した.ニトロキシラジカルによるリビングラジカル重合法により,イオン鎖として弱酸性のポリアクリル酸,疎水鎖としてポリスチレンを有するジブロックコポリマーを合成した.このポリマーは,電荷を帯びる中性およびアルカリ性では界面不活性を示し,酸性条件では界面活性に転移することを確認した.これにより,界面不活性という我々が世界で初めて発見した,界面化学の常識を覆す特異な性質は,気水界面における鏡像電荷効果が主因であることが確認された.また,水中で形成されているミセルの大きさとそのpHおよび添加塩濃度依存性を動的光散乱法により調査を行った.その挙動は「臨界充填パラメータ」の概念によりよく説明された.ミセルを形成し始める濃度「臨界ミセル濃度(cmc)」の添加塩およびpH依存性を調査した.Cmcは添加塩濃度の増加に伴い,増加する傾向が確認され,この一般の界面活性剤と逆の傾向は,界面不活性高分子の普遍な性質であることが示唆された.この成果は,添加塩によるミセルの形成/崩壊の制御にもつながり,さらには,内包薬物の放出制御へも応用可能な貴重なものである.pH変化に対しては,中性附近で極小を示した.酸性から中性に変化すると,ポリマーが電荷を帯びるため,界面不活性となり,気水界面に吸着できず,cmcが低下したと説明できる.中性からアルカリ性に欠けての上昇は,pH調整に用いたNaOHが過剰な塩として振る舞ったためと考えられる.さらには,RAFT重合法によりカチオン性の両親媒性ジブロックコポリマーを合成し,その界面不活性性を検討した.このポリマーもすでに研究を行っているアニオン性高分子と同様,界面不活性性を示すことを確認した.このカチオン性ポリマーの不活性性発現により,我々の提唱する鏡像電荷効果が主因との説の正当性が確認された.
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