2009 Fiscal Year Annual Research Report
酸化鉄による不均一リビングカチオン重合:環境への負荷の小さな革新的触媒系の創製
Project/Area Number |
19350060
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青島 貞人 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (50183728)
|
Keywords | リビングカチオン重合 / 不均一リビング重合 / 酸化鉄 / 硫酸鉄 / 金属酸化物 / ビニルエーテル / 添加塩基 / 立体規則性 |
Research Abstract |
イオン重合ではこれまで、不均一系でのリビング重合が困難であった。本年度は、当研究室で見出した酸化鉄や他の金属酸化物によるビニルエーテル類のリビングカチオン重合の挙動や機構をさらに詳細に検討する共に、新しい硫酸鉄での不均一リビング重合および立体規則性重合の可能性について検討を行い、大きな成果を得ることができた。さらに、このような不均一重合系を用いる際に必要になる、開始剤や特徴ある添加物の検討、また、不均一重合系を用いて合成が期待される新しい構造のポリマーの開拓をした。具体的に行った検討としては、(i) 酸化鉄および他の金属酸化物を用いた不均一系の重合挙動及び重合機構の検討とまとめ、(ii) 硫酸鉄を用いた不均一リビングカチオン重合及び立体規則性重合の可能性、を検討した。また、本重合系に必要になる、(iii) 従来の不安定な開始種に変わるリビング重合に有効なアルコール類開始剤の検討、(iv) 鎖増加型重合反応を引き起こす添加物として有効なピロールの検討、さらに、本重合系を利用しての合成が可能な新規な構造のポリマーの開拓として、(v) ベンズアルデヒドとビニルエーテルの交互共重合体の合成やアミノ基を有するビニルエーテルのリビングポリマー合成に関する基礎的な検討を行った。 その中で最も特徴的な研究としては、(ii)従来の金属酸化物とは異なる不均一開始剤系として、硫酸鉄によるカチオン重合を検討したところ、添加塩基存在下でリビングポリマーの生成が確認されるとともに、異なる条件では、長寿命かつ立体規則性が従来と大きく異なる活性種の存在が明らかになった。この結果は、このような不均一重合系が分子量や一次構造だけでなく立体構造制御の可能性を示しており、今後の精密ポリマー合成への大きな一歩となる。また、将来的に本系の工業化などを考えるために新規開始種が検討され、アルコール類の有効性が明らかになった。
|