Research Abstract |
銅の解毒に関わるマルチ銅オキシダーゼCueOのタイプI銅配位子のひとつであるCys500をSerに置換することによって,空位のタイプI銅部位が作製された。この変異体と酸素の反応によって,酸素が2電子還元されてパーオキサイドとなったと思われる中間体(中間体I)が単離された。Cys500に加えて,酸素の結合と還元にあずかる三核銅部位外圏に位置するAsp112をAsnに変異させた二重変異体と酸素との反応から,Asp112が酸素結合をアシストしていることが明らかとなった。また,二重変異体Cys500Ser/Glu506Glnは中間体Iの状態で安定化していることが明らかとなった。そこで,この二重変異体のX線結晶構造解析を行ったところ,X線によって生成した水和電子によって容易に還元を受け,休止体(酸化体)へと至ることがわかった。次いで,変異体Glu506Glnと酸素の反応によって,中間体IIを捕捉し,キヤラクタリゼーションした。その結果,中間体IIは極低温の電子スピン共鳴スペクトルにおいて,g<2の幅広く,かつ,マイクロ波によって飽和しないシグナルを与えたことから,三核銅部位のすべての銅イオンが強く磁気的相互作用していることがわかった。また,組換えCueOの高分解能X線結晶構造解析に成功し,休止体の構造が従来考えられていたものとは異なることを明らかにした。これらの知見から,新規な反応メカニズムを提唱するに至った。さらに,タイプI銅配位子への水素結合の生成および切断を実現し,マルチ銅オキシダーゼの酵素活性を任意に変化させることに成功した。この原理はすべてのマルチ銅オキシダーゼに適応することが可能な一般性の高いものである。
|