Research Abstract |
植物の光形態形成を制御している光受容色素蛋白質フィトクロムの構造と機能を解明するために,開環状テトラピロール骨格を有するビリン系発色団の一般合成法を開発し,これまでに多くの新知見を得た。例えば最近,CD環部分の立体化学を固定した発色団を合成し,アポ蛋白質と再構成させて得られる人エフィトクロムの分光学的並びに生物化学的な解析を行い,生理学的に不活性で赤色光吸収型のフィトクロムPrの発色団15位の立体化学はZ-antiであり,生理学的に活性で遠赤色光吸収型のPfrではE-antiであることを世界で初めて直接的に解明した。さらに平成19年度における本研究では,AB環部分の立体化学を固定した発色団を新たに合成し, Prは5Z-synであることを解明した。また,5Z-synで固定した発色団を用いて再構成されたバクテリオフィトクロムAgplの光変換反応について詳細に検討した結果, Prから中間体Meta-R_Aへの光変換は容易に進行するものの,Mata-R_cを経由するPfrへの変換過程がブロックされることが明らかとなった。このように有機合成化学を基盤とするフィトクロム研究は極めて有効であり,必要であることを示すことができたが,まだ,Pfrの5位の立体化学は不明である。そこで,発色団の15位と5位の立体化学を共に固定したビリベルジン(BV)誘導体を合成した。今後,アポ蛋白質との再構成実験により,Pfr型発色団の立体化学を解明していく予定である。さらに平成20年度における飛躍を目指して,15位と5位の立体化学を固定したフィコシアノビリン(PCB)の合成やアフィニティ-クロマトグラフィーの実現に向けた予備的実験においても良好な成果を挙げることができた。
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