2008 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の一分子計測を目指した新しいプローブ分子の開発
Project/Area Number |
19350084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 行男 Kyoto University, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (90109059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多喜 正泰 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (70378850)
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Keywords | 希土類蛍光ラベル剤 / エネルギー移動 / タンパク質 / 特異的認識 / 時間分解蛍光 / 一分子計測 / ペプチドタグ |
Research Abstract |
タンパク質の一分子計測はプロテオミクス研究において、究極かつ本質的な情報をもたらす手法である。本研究課題では筋収縮弛緩機構の解明を目指し、トロポニンCの一分子計測を可能とする新規なプローブ分子の開発を進めてきた。前年度に引き続き、タンパク質希土類蛍光ラベル剤の開発を行った。今回設計した分子は、中心金属イオンとして蛍光性の希土類イオンとして知られているテルビウムを用い、さらに亜鉛イオンとの錯形成を利用して特定のアミノ酸配列(ペプチドタグ)を認識させるものである。さらに、ペプチドタグ中のトリプトファン側鎖から希土類中心へのエネルギー移動が効率よく進行することで、希土類の発光が遅延蛍光成分として観測される。まず初めに、合成した希土類錯体と最も強く結合し、効率的なエネルギー移動が起こるためのペプチドタグ配列を探った。各タグ分子を固相法により合成後、HPLCで単離・精製し、MALDI-TOFにより目的物の確認を行った。タグ分子と希土類錯体との錯形成の様子は、等温滴定カロリメトリー(ITC)および蛍光スペクトルで追跡し、それぞれの滴定から結合定数を決定した。続いて、各タグ分子と錯形成した希土類錯体の蛍光寿命を軽水中および重水中でそれぞれ求め、希土類イオンに直接配位している水分子の数を計算したところ、水分子の数が希土類イオンの発光強度に影響を与えていることがわかった。すなわち、タグ配列におけるトリプトファン残基と希土類中心の距離が近くなることで、効率的なエネルギー移動が起こるだけでなく、水分子の配位も妨げるため、強い発光が観測されるようになる。次に設計したタグ配列をグルタチオントランスフェレーゼ(GST)に融合し、タグ融合タンパク質の特異的な認識が可能かどうか検討した。その結果、タグ配列を有していない細胞破砕溶液では、希土類錯体添加時においても大きな系蛍光増大は認められなかったのに対し、タグ融合タンパク質が含まれている細胞破砕溶液では、希土類イオンの強い発光が観測された。すなわち、希土類蛍光ラベル剤へのエネルギー移動は、タグ中のトリプトファンからのみ起こっていることがわかった。
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Research Products
(7 results)