Research Abstract |
本研究では,強誘電性柱状液晶相の実現を目的とし,先に当研究室で報告した強誘電的な性質を示すウレア誘導体N,N'-ビス(3,4,5-トリアルコキシフェニル)尿素を基本骨格とした新規尿素誘導体の合成,および,その評価を行った.まず,尿素に直結しているコアを長くしたビス(3,4,5-トリアルコキシベンジルオキシフェニル)尿素を合成したところ,安定な六方柱状液晶相を示した.電気測定を行ったところ,強誘電的な挙動を示した.性能は,先に報告した尿素誘導体よりも改善され,スイッチング速度は4倍から5倍程度になり,液晶温度域も50℃程度も低温化した.本化合物は,液晶状態において,各柱状構造体(カラム)で,直線的な分子問水素結合をした尿素分子集合体が,二重らせんを形成していることが判明した.また,コアの長さを変えずに,尿素誘導体の酸素原子を硫黄原子にしたチオ尿素誘導体,N,N'-ビス(3,4,5-トリアルコキシフェニル)チオ尿素を合成した.このチオ尿素は室温においても安定な六方柱状液晶相を示したが,電界をかけてもスイッチング挙動を示さなかった.10分程度電界をかけ続けると,電界に沿ってカラムが並ぶことが観察された.これは,チオ尿素分子が柱状構造体の中で,ジグザグの一次元水素結合を持ち,分極を柱状構造内で部分的に打ち消していることと関係しているものと思われる.また,2つの3,4,5-トリアルコキシフェニル尿素基をアルキルスペーサー(-(CH2)8-および-(CH2)9-)で結んだ化合物では,両化合物とも,キュービック相を示し,電解に対しては反応しなかった.その他にも,トリ(2-アミノエチル)アミンを出発原料とし,トリ尿素体の合成を試みたが,合成することはできなかった.このように,19年度の研究では,コア長を延ばした化合物において,スイッチングにおける応答速度の改善と液晶温度域の低温化に大きな進展があった.
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