2008 Fiscal Year Annual Research Report
新しいデザインコンセプトに基づく光電変換ナノ材料の創製
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19350091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相田 卓三 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (00167769)
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Keywords | 超分子化学 / 光物性 / ナノ材料 / 太陽電池 / 自己組織化 |
Research Abstract |
近年、次世代のエネルギー源として有機薄膜太陽電池が注目されている。それを実現するために重要なのが電子ドナーとアクセプター分離して積層した集合構造である。当研究室ではアクセプター分子であるトリニトロフルオレノン(TNF)をペンダントとするヘキサベンゾコロネン(HBC)誘導体の自己組織化により、ドナー分子層をアクセプター分子層でラミネートした構造を有するコアキシアルナノチューブの構築に成功している。これは、電荷移動相互作用により会合しやすいドナー/アクセプターユニットの分離・集積を実現している点で特筆すべき結果である。このナノチューブの壁は、HBCユニットがスタッックして出来ており、表面に位置するTNFとの光誘起電子移動によって生じたホールが、チューブの壁を経路として輸送される事になる。このように、ドナー/アクセプター分離・集積構造を、ナノスケールの1分子レベルばかりでなく、ナノオブジェクトへ作り込むことに成功している。本年は、両親媒性という性質を生かした新たなドナー/アクセプターの分離積層構造を提案し、その検証を行った。 アルキル鎖、テトラエチレングリコール鎖はそれぞれ親油性、親水性の官能基であり同じ鎖同士で集合する。即ち、一分子内にドナーとアクセプター両方を持つダイアドに対して適切にこれらの鎖を導入してやる事によって分離積層構造を作る事ができると考えられる。実際、一分子内にオリゴチオフェン(ドナー)とフラーレン(アクセプター)を持つ鎖状ダイアドの片方の端にアルキル鎖を、もう片方にテトラエチレングリコール鎖を導入した分子は液晶性を示し、先の両親媒性の効果によってドナーとアクセプターが分離積層構造をとっている事が明らかとなった。実際、両方にアルキル鎖を導入した親油性のダイアドに比べて約10倍の光電流を観測する事ができた。更に、このコンセプトは縮環ポルフィリンの集合化にも効果を発揮した。ポルフィリンを二枚縮環した巨大なπ共役平面を持つ縮環ポルフィリンの集合化に際して、左右に同じ鎖を導入したものに関してはアモルファスであったのに対し、左右に異なった鎖を導入した分子は液晶性を示した。これは両親媒性の分子デザインによりナノ層分離構造が達成されたためであると考えられる。また、ヒゐ分子は室温ディズヨヂの液晶材料の中で現在最も高い一次元電子移動度(0.27cm2/V・s)を有している事は特筆すべき点である。
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