2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19360034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 康志 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 教授 (60294047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PRABAT Verma 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 准教授 (60362662)
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Keywords | チップ増強ラマン散乱 / 化学増強効果 / 近接場ナノ分光 / 無電解還元法 / 表面増強ラマン散乱 / 化学吸着 / 局在プラズモン / 分子ナノイメージング |
Research Abstract |
昨年度開発した、金属ナノ探針と試料間距離をオングストロームオーダーの精度で制御しながら近接場ラマン散乱スペクトルを逐次測定する装置を用い、アデニンナノ結晶およびカーボンナノチューブの近接場ラマンスペクトル変化を測定した。アデニンナノ結晶上で銀をコーティングした原子間力顕微鏡のカンチレバーを近接場プローブとし、試料表面と探針先端との距離が十分に離れていたとき721cm^<-1>であったラマンバンド(RBM:Ring Breathing Mode)が試料表面-探針先端間距離0.1nmのとき731cm^<-1>にシフトし、距離0nmすなわち接触時にはシフトしたバンドのラマン散乱光強度が増加し、さらに、距離-0.1nmのときにはバンドが736cm^<-1>にまでシフトすることを観察した。試料表面-探針先端間距離0.1nmのときは、探針の銀原子とアデニン分子の電子軌道が重なり始めることで、RBMの振動が摂動を受け、高波数側にシフトしたと考えられる。分子軌道計算によっても、N_3位の窒素原子が銀原子に結合したとき高波数側にシフトすることが得られ、とくに熱的に安定に化学吸着状態にあるラマンバンドの振動数と一致することを確認した。この状態は表面増強ラマン散乱の条件と同一である。さらに、距離が-0.1nmのときは形成された錯体が力により変形していることを示しており、これについても分子軌道計算の結果との一致を見た。AFMを用いることで銀原子と分子間距離を任意に制御することが可能になったことで、これまでは不可能であった錯体形成直前から錯体形成時、さらに変形まで含めたラマンバンドのダイナミック測定を実現することに成功した。さらに、カーボンナノチューブ測定では、力学的相互作用の距離依存性を利用することで、近接場ラマンイメージングの高空間分解能化を達成し、3nmの分解能を実現した。
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Research Products
(5 results)