Research Abstract |
拡散光イメージングにおいては,頭皮上に装着した照射・検出プローブペアによる脳組織内の探測領域(空間感度分布)を求めることが重要となる.空間感度分布は実測できないため,光計測で得られる光学的な情報と他のモダリティで測定した形状情報等を仮想空間上で情報統合したバーチャル・ファントムを構築することによって,空間感度分布を推定する方法について検討した.頭部の形状情報は,磁気共鳴イメージング法によって取得し,光学特性が異なる5つの領域(頭皮,頭蓋骨,くも膜下腔,灰白質,白質)に領域分割した.光学特性値については生体サンプルの文献値を用いたが,頭皮と頭蓋骨をあわせた表層組織については,パルスレーザを用いた時間分解法による光学特性値測定を並行しておこなった.実測で得られた表層組織の散乱係数が文献値よりも小さいという結果になったため,表層組織の光学特性値の差異が脳内の光伝播に及ぼす影響について検討した.光伝播解析法としては,有限要素法で光拡散方程式の数値解を求める方法が計算コストの観点から最適であるが,脳周囲に存在するくも膜下腔の散乱係数が小さいため,光拡散方程式における拡散近似が成立しない可能性が考えられた.そこで,計算コストはかかるが最も正確な結果が得られるモンテカルロ法によって光輸送方程式の数値解を求め,有限要素法の計算結果の妥当性を検証した.構造を簡単化した平行平板モデルでは,有限要素法とモンテカルロ法の結果の差異はわずかであったが,上述した頭部のバーチャル・ファントムにおける計算結果を比較したところ,プローブペアの装着部位に依存して誤差が変化した.このことで,脳溝などによる,くも膜下腔の厚さの変化が有限要素法の計算結果に影響を及ぼすことが示唆されたので,さらに詳細にシミュレーションを行い検討する予定である.
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