Research Abstract |
本研究では,白色X線を利用して,複数の回折情報を利用する総合的な材料評価システムを構築することを目的とし,今年度は以下のことを明らかとした. 1.比較的小さな領域の応力測定を可能とするために,試料とX線源の間に制限スリットを導入し,3mm×3mmの白色X線照射領域での応力測定を可能にし,本手法の汎用性を高めた. 2.結晶粒径が2μm程度の超細粒鋼の片側切り欠き材に,4点曲げによって疲労き裂を導入し,き裂先端近傍のひずみ分布を,白色放射光を用いて負荷状態でひずみのその場観察を行った.複数の回折面情報をもとにして,それぞれの回折面に対する2次元ひずみ分布および回折線幅分布を捉えることによって,種々の回折面からのプロファイルを解析し,測定に最適な回折面を明らかにした.また,き裂材の三次元弾塑性有限要素解析を実施し,測定結果と比較検討した.測定されたひずみ分布は,解析によって得られた結果とよく一致しており,白色放射光の有効性が示された. 3.時効二相ステンレス鋼の引張変形下における格子ひずみを,α相およびγ相それぞれについて複数回折面について測定するとともに,各相の格子ひずみと巨視的な負荷ひずみを比較検討することから,複雑なひずみ状態にあることが示され,変形解析に有用な情報が得られることが示唆された. 4.これまでに得られた結果より,白色X線を用いた材料評価システムを構築するとともに,その有用性を示すことができた.今後,さらに一般産業要素に適用することから,その汎用性を高めることが必要である.
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