Research Abstract |
切削速度が被削材の塑性波伝播速度を越える超高速切削過程の切削現象を実験的に検討するため,環境制御型高速衝撃試験機を開発した.本試験機は,微小の切削工具を内蔵した全質量18gの飛翔容器を,圧縮ガスで発射し高速に加速させ,加工チャンバ内に設置した被削材の一部を削ることで高速切削過程を実現するものである.切削機構を分析する上で重要な切りくずは,飛翔容器内に捕獲する機構である.切削終了後,高速で飛翔する飛翔容器を損傷無しに停止させるため,圧縮ガスを対抗側から噴射する.本試験機は切削雰囲気の影響も考慮できるようにするため,大気から40Paまで環境を制御可能である.今年度は切削速度154m/sを達成した.開発した試験機を用いて,アルミニウム合金A2017と純鉛を被削材とし切削実験を行った結果,以下の知見を得た.塑性波伝播速度が154m/s以上であると推定されるA2017の場合は,切削速度154m/sで,せん断角は40^0に至る程高くなり,薄く,カールしない切りくずが生成する.仕上げ面は切削速度が高速化すればするほど平坦となる.一方,塑性波伝播速度が20m/sから80m/sと推測される純鉛の場合は,極低速切削では良好な仕上げ面が得られるが,切削速度50m/s付近では縮緬状の仕上げ面となり,切削速度が100m/sを超えると仕上げ面表面が溶融しているような性状となった.切りくずは切削速度100m/s付近までは薄く長い切りくずとなるが,これを越えると,切りくずは長くならなくなり,代わりに切りくず幅が顕著に広がるようになる.切りくず厚さは切削速度が増加するほど薄くなるので,せん断角は切削速度138m/sで45^0に至った.これより超高速切削過程では,せん断域の塑性衝撃波により非常に高い静水圧が発生するが,二次元切削の場合は,この高い静水圧を除荷するため切りくずの幅が拡大したと考えられる.
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