Research Abstract |
切削速度が被削材の塑性波伝播速度を超える超高速切削過程では,せん断域に塑性衝撃波が伝播する.塑性衝撃波が伝播する領域は非常に高い静水圧下で,非常に高いひずみ速度で塑性変形していると考えられる.このため塑性衝撃波を伴う超高速切削による仕上げ面特性は,塑性衝撃波を伴わない場合と大きく異なる特性を有すると推測できる.昨年までは,開発した高速切削試験機(特許取得済み)を用いて,塑性波伝播速度が60m/sから80m/sの純鉛を用いて切削実験を行った結果,切削速度が100m/sを超えると切りくず生成機構が大きく変化することより,超高速切削で塑性衝撃波が実際に発生する証拠の一端を掴んだ.しかしながら,切削力(比切削抵抗)を高精度に計測できなかったため,今年度は計測システムの高精度化を計った.ここでは,切削前後の被削材の形状を計測し,両者の形状の差より真実切取厚さを自動計測する形状測定システムを開発し,また切削力と切削速度の波形を高サンプリングで計測できるように計測システムの改良を加えた.その結果,純鉛を被削材とした場合,切削速度が100m/sを超えると,比主分力が低下し,比背分力は僅かに増加する傾向が分かった.塑性波伝播速度が200m/s程度のアルミニウム合金でも同様の傾向が見られた.高速切削速度域での比主分力の低下は,切削熱による材料の熱軟化が主原因と言える.しかしながら,比背分力の増加,すなわち,超高速切削過程では摩擦角が極端に増加する原因の詳細な解明までは至らなかった.なお,動力計の周波数応答特性は上記切削条件を計測するに十分であることは確認している.さらに高速切削速度域の切削温度を実際に計測するため,工具表面に微細な熱電対を埋め込むセンサ内蔵工具の適応を試みた.ここでは工具表面にセンサ回路パターンとなる微細な溝を超音波加工で高能率に創成する手法として,薄硬質材-薄軟質材積層サンドウィッチ工具を開発し,特許出願した.
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